2025/04/09 12:52

北欧家具の名作を生み出したデンマークのデザイナーたち


北欧家具の黄金期を作り上げたデンマークのデザイナーを8人ご紹介します。




1. Kaare Klint ( コーレ・クリント )

1917年からデザイナーとして活動を始め、1924年に王立デンマーク芸術アカデミーに家具科を設立。多くの優秀な家具デザイナーが巣立っていることから“デンマーク近代家具の父”と呼ばれています。代表作の「プロペラ・スツール」は古代エジプトの折り畳み椅子から、「サファリ・チェア」はイギリス軍の屋外用椅子から触発されたデザインで、彼はより広い視野から古典的家具のリデザインという手法に取り組みました。父のイェンセン・クリントは照明器具メーカー「レ・クリント」の創業者で、レクリントもランプシェードのデザインをいくつか手掛けています。





2. Paul Henningsen ( ポール・ヘニングセン )

出典:H.L.D ONLINE STORE

ポール・ヘニングセンの代表作といえば彼のイニシェルから呼ばれている「PHランプ」。1924年にシリーズ最初のモデルがデザインされてから、数十年をかけて改良されバリエーションを増やしていきました。ヘニングセンは「眩しさは目の能力を減退させ、ものを見えなくさせる」と考え、彼は物理学者のように光線を図面に描いて電球の眩しさを取り除く方法を模索しました。シェードに対数螺旋曲線を採用し、全ての光線は同じ角度でシェードに当たり、また同じ角度で反射されるよう設計。その結果、光と眩しさをコントロールした機能的な照明器具を作り上げ名作として今も愛され続けています。





3. Arne Jacobsen ( アルネ・ヤコブセン )

「セブン・チェア」「アント・チェア」「スワン・チェア」「エッグ・チェア」「オックスフォード・チェア」などの椅子、「AJランプ」をはじめとする照明器具など数々の名作を残したデザイナー。ヤコブセンは裕福なユダヤ人家庭に生まれ、王立芸術アカデミーで建築を学び、1956~65年には建築学科の教授もつとめました。建築家としても有名で、ベルヴュー・ビーチ付近の建物やSASロイヤルホテル、デンマーク国立銀行など公共施設から個人宅までデンマーク国内にはたくさんのヤコブセンの建築が現存しています。ヤコブセンのプロダクトは大量生産向きではありますが、ほとんどは建築のトータル・デザインの一環としてデザインをされました。





4. Finn Juhi ( フィン・ユール )

王立芸術アカデミー建築家に入学後、1934年から建築事務所で働き始め、1940年代からは家具デザイナーとして活動しました。彼のデザインは木の素材にしながらも当時のデンマークの主流のスタイルとは異なり、抽象彫刻から影響をうけた大胆な曲線美が随所に現れています。彼の代表作には、羽ばたくペリカンを想起させる「ペリカン・ソファ」、“最も美しいアームを持つ椅子”と評される「NV-45」、クラフツマンシップと彫刻的フォルムを融合させた「チーフテン・チェア」があげられます。





5. Hans J. Wegner ( ハンス・J・ウェグナー )

“椅子の巨匠”として知られ、500脚以上の椅子をデザインしています。ウェグナーは17歳で家具職人としての資格を得てから芸術工芸学校に在籍後、デザイナーとして活動を始めました。1940年は約3年間はアルネ・ヤコブセンの設計事務所で働き、1949年に“ザ・チェア”として知られる「ラウンド・チェア」を、翌年には代表作である「Yチェア」を発表しました。ウェグナーならではのフォルムや美しい接合部を創り出す基盤となっているのは、家具職人としての技術と知識。そして美的センスは、木材への深い造詣と、天然素材への探究心がベースとなっています。




6. Nanna Ditzel ( ナンナ・ディッツェル )

ナンナ・ディッツェルはデンマークデザイン界の黄金期に活躍した人物の一人であり、現在の女性デザイナーが男性と対等に活躍するための基盤を確立したことで有名です。代表作といえば「ハンギング・チェア」や「トリニダード・チェア」など有機的なフォルムが印象的です。それまで一般的とされていた素材や加工技術に関心を示すことはなく、人間の体と空間の探求を重視し、より自由で、より豊かな生活に貢献する家具を創ることを追求しました。柔らかさを感じるデザインや、枠にとらわれない大胆なアイデアは多くの人を惹きつけ、名誉ある賞を多数受賞しました。




7. Verner Panton ( ヴァーナー・パントン )

“北欧らしくないデザイナー”として有名なヴァーナー・バントンは幾何学的なパターンやフォルムを好んで使い、色使いもエキセントリックなものが多いです。オーデンセの技術学校、王立芸術アカデミーで建築を学び、1950年から52年までアルネ・ヤコブセンの事務所で働き、1955年に自身のスタジオを設立。彼は、建築を学んだ後、心理学に没頭しました。色が人に与える影響に強い興味を抱いていた彼が目指したのは、建築、インテリア、プロダクトデザインと色彩心理学を結びつけることでした。代表作には「コーン・チェア」や世界初のプラスチック一体成形の椅子「パントン・チェア」やラグ「ジオメトリ」や照明器具「パンテレッラ」などがあります。





8. Poul Kjærholm ( ポール・ケアホルム )

1949年からコペンハーゲン芸術工芸学校で家具を学び、王立芸術アカデミーの家具科に入学後は「Yチェア」のデザイナーとしてすでに活躍していたハンス J. ウェグナーのもとで、色々な事を学びました。 代表作は卒業制作として作った「PK22」。学生が作ったと思えないクオリティの高さから、現在のフリッツ・ハンセンのPKシリーズのラインナップに加わっています。 彼はデザインにおけるコンセプトとして、“美しさの基準は自然界にある”という言葉を掲げていました。また、素材に関しても、自然界にいた時の色合いや表情をできる限り残すというコンセプトも大切にデザインされました。彼は、“自分を出すよりも天然素材のキャラクターを出すことの方が大事” と語るほど、天然素材の質感や風合いは、人 が創り出したどんなものより美しいと考えて いたのです。





いかがでしたでしょうか。私自身、ブランド名で覚えていたチェアや照明も「あ!これとこれはこのデザイナーだったのか!」と気付くことができたり、作品を並べてみるとなんとなくデザイナーの傾向が見えてきたりとても勉強になりました。



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