2021/03/19 22:20
このコラムでは「私の北欧での暮らし。」 をテーマに、実際に北欧での暮らしを経験した方々の気付きをお届けしていただきます。
三人目のコラムニストはフィンランドのヘルシンキ在住でCAをされているSayakaさん。
最初のコラムは「夏のコテージでの過ごし方」について。
フィンランドといえば連想する方も多いもののひとつではないでしょうか?
のんびりしてそうで理想的な過ごし方!となんとなくでしか感じることができなかった文化ですが、さやかさんの実際の体験を通して本質的な価値に触れることができました。
森が教えてくれた「暮らしのヒント」
フィンランドでは国土の約75パーセントが森で覆われ、湖の数は18万個を超えると言われています。「自然享受権」と呼ばれる、誰でも自然を楽しむ権利を保証する法律が存在することも有名です。このコラムでは、私がそんな自然と調和する国フィンランドに移住して感じたことを、皆さんにお話しできたらと思います。
フィンランドでは夏になると多くの人が長期の休みを取り、森に囲まれたコテージで過ごします。
忙しい日常から離れて、静かな自然の中で心身ともにリラックスして過ごすコテージでの休暇は、フィンランド人にとって欠かせない存在です。
私もフィンランドに引っ越して間もなく、フィンランド人の友人に誘われ初めてコテージに行くことに。
ワクワクしながら友人におすすめの過ごし方を聞くと、「何もしないことを楽しむんだよ」との答えが返ってきました。
カバンに大きなカメラと沢山の着替えを詰め込んで観光気分だった私は、その一言に思わずはっとしたのを覚えています。
一般的なコテージは水道が通っていないことが多く、シャワーや水洗トイレもありません。
水が必要な際は湖の水を引き、暖炉やサウナに使う薪は自分で割って準備し、Wi-Fiやテレビがないなんてこともしばしば。
なんでも簡単に手に入る都会の生活に慣れていた私にとって、決して便利とは言えないコテージの生活スタイルは全てが新鮮でした。
朝起きたら暖炉をおこし、コーヒーを飲みながら読書する。晴れたら森に散歩に出かけ、採れたてのキノコを使って夕飯を作る。夜はサウナで汗を流し、湖に飛び込み体の汚れを落とす。
時間にとらわれず、その日の気分で予定を決める。そんなコテージでの「何もしない」体験を通して見えてきたものは、目まぐるしい日常の中で、一度立ち止まることの大切さでした。
フィンランドに移住する前の私は、ドバイの航空会社に客室乗務員として就職し、寝る暇もなく世界中を飛び回る生活をしていました。
流行りの洋服や高級ブランドのカバンを買って物欲を満たし、月の3分の2は仕事でもプライベートでも旅に出て、有名観光地のリストをチェックして達成感を得ることが幸せだと思っていました。
物質的な幸福感を追い求めて生きていた私も、不便な田舎のコテージ生活に慣れていくうちに、晴れた日の空、淹れたてのコーヒーの香り、静かな森の澄んだ空気、気心の知れた友人と囲む夕食、そんなふとした瞬間に幸せを感じている自分に気がつきました。
足りないものでなく今あるものに目をむけてみると、日々の生活の中には幸せを感じるポイントが沢山隠れているんだと思うと、なんだか心がふっと軽くなったように感じました。
仕事に疲れてイライラしたり、煮詰まってしまった瞬間にこそ、立ち止まってほっと一息ついてみる。あえて遠回りしてみると、いつもとは違う景色が見えてくる。
フィンランドの森に、そんな暮らしのヒントを教えてもらったような気がします。
このコラムを書いてくれたのは
Sayaka Kozawa
1992年生まれ。学習院大学文学部在学中にカナダのバンクーバーへ留学し、大学卒業後にエミレーツ航空に入社。2年間の乗務の後フィンエアーに転職。現在はフィンランドに在住し、日本人客室乗務員として日本線とヨーロッパ線、フィンランド国内線を担当している。2020年より北欧フィンランドの暮らしを伝えるYouTubeチャンネルを運営している。
instagram:@sayaka1215x
youtube:Sayaka Kozawa
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